ひと口老人ホームといっても、役割に応じて細かく分類され、サービスや特徴もさまざまです。「高齢者向け」ということは共通していますが、選ぶ施設によって満足できるかそうでないかが大きく変わってくるでしょう。そこで今回は、老人ホームのなかでももっともポピュラーな「有料老人ホーム」「グループホーム」の違いについて、徹底的に調査してみました。ぜひ参考にしてください。
それぞれの特徴を知る
「老人ホームへの入居を検討しているけれど、どこを選んだらいいかわからない」という方は意外と少なくありません。
老人ホームは、入居条件や対象者、ケアの目的などによって選ぶ場所が異なります。そのため、高齢者=どこの老人ホームでもOKというわけにはいかず、条件によって選ぶ場所が変わってくるでしょう。
まずは、それぞれの特徴を解説します。
有料老人ホームとは
有料老人ホームとは、生活に必要なサービスを1つ以上提供している住まいです。種類によってサービス内容が異なるため、費用差があり、安いところもあれば高いところも存在します。
たとえば「介護付き」は、その名のとおり介護スタッフが常駐している老人ホームです。生活に関するすべてのことを介助してくれるので、ひとりでは生活が困難な場合に役立ちます。
なかには看取りまで対応しているところもあり、終の棲家として探している方も少なくないでしょう
「住宅型」は、介護認定なしの方でも入居できる老人ホームです。ただし、介護サービスを受ける場合は訪問介護事業所と契約する必要があるため、少し煩わしさがあります。入居者の身体状態によってサービス内容・費用が異なるのも注視したい点です。
グループホームとは
グループホームとは「民間施設」に分類される老人ホームです。「認知症対応型共同生活介護」とも呼ばれており、認知症の診断を受けた方のみ入居することができます。
一番のメリットは、住みなれた地域で暮らし続けられることです。最大9名での共同生活になりますが、基本的に少人数なのでアットホームな空間でゆっくり過ごせます。
一方で、家事などは役割分担になるため、家事が苦手だと不向きの可能性があるでしょう。
大きな違いは「入居条件」
有料老人ホームとグループホームは、基本的なサービスに大きな違いはありません。しかし、入居条件や退去要件など、細かいところに違いがあります。
入居条件/退去要件
有料老人ホームは、施設によって入居条件が異なります。そのため、誰でも自由に入居できるところもあれば要介護1~5と決まっているところもあり、事前確認が必要です。
退去要件は、要介護の重度化や長期入院など、身体状態が悪化した場合です。
一方でグループホームは、認知症の診断を受けた方が入居するため、要支援2以上であることが条件になります。また「住んでいる地域の施設」でなければいけないことから、施設所在地の住民票も必要になるでしょう。
退去要件は、長期入院や認知症の症状が進行した場合などが挙げられます。どちらも、施設での対応がむずかしくなると退去になるケースが多いでしょう。
入居者層
有料老人ホームは、60歳代からであれば基本的に入居が可能です。上限は施設によって異なりますが、100歳を超える方でも受け入れてもらえます。介護度も、自立~要介護と幅広いでしょう。
グループホームは「認知症と診断された高齢者」が対象になるため、自立できる方は入居できません。
待機状況
有料老人ホームは各地に施設があるため、比較的すぐに入居できるのが特徴です。費用が安いところはすぐに埋まりますが、それ以外であれば待機なく入居できるでしょう。
一方でグループホームは定員数が少ないため、どうしても待機期間が長くなってしまいます。なかには数か月待つところもあり、スムーズに入居したい方はなるべく早めに探すようにしましょう。
運用母体
老人ホームは「公的施設」「民間施設」の大きく2つに分類されます。公的施設は、社会福祉法人や医療法人などが運営している施設になり、民間施設は民間企業が運営している施設です。
有料老人ホームは、主に民間企業が運営しているため「民間施設」になります。介護保険制度の創設によって民間企業が運営しやすくなったのが大きく関係しているようです。
グループホームは、社会福祉法人や医療法人が運営しているため「公的施設」に分類されます。しかし、なかには民間企業が運営している施設も存在します。
雰囲気
有料老人ホームは、施設によって特徴が異なるため、雰囲気もさまざまです。戸建てのようなところもあれば、ホテルのような高級感を感じさせるところもあり、好みに合わせて選びやすいでしょう。
「なるべく落ち着いた雰囲気がいい」という方のために、定員数が少ない有料老人ホームも存在します。
グループホームは、もともと定員数が少ないので、全体的にアットホームです。もちろん施設によって雰囲気は異なりますが、共同生活しやすいのが特徴です。
費用
老人ホームにかかる費用は「初期費用」「月額費用」の2つです。
有料老人ホームの初期費用は、施設の特徴や入居年齢などによって差があります。そのため、0円で入居できるところもあれば数億円になるところもあり、高級ホテルのような施設はやはり高額です。
また、入居金には「返還金制度」があるため、一時金を使いきる前に退去した場合は残金を変換してもらえます。
月額費用の相場は15万~40万円、前払い家賃で月額費用を調整できるところもありますが、介護サービスを受けると別途費用が発生するので気をつけましょう。
グループホームは、初期費用数十万円と高いところでも100万円を少し超える程度です。0円~数億円の有料老人ホームに比べるとそれほど高くありません。返還金制度が設定されている施設も存在します。月額費用も5万~30万円程度と低めでしょう。
ただし、別途費用として「介護保険負担分」があるので注意してください。
提供サービスが異なる
介護体制・医療連携・レクリエーション・自立支援など、提供サービスにも違いがあります。入居を検討している方は、事前に確認しておくと安心です。
介護体制
有料老人ホームは、要介護入居者3:介護スタッフ1で配置されます。看護師は1人以上配置されることになり、住宅型の場合規定はありません。
グループホームも要介護入居者と介護スタッフの人数は同様です。ただし、看護師の配置は義務付けられていないため、なかには配置していない施設もあります。
医療連携
有料老人ホームは、協力医療機関と提携し、健診や診療などを実施します。看護師による健康管理も必須です。
しかしグループホームは、緊急時のみ協力医療機関と提携し、入居者が病気にかかると各自の主治医が往診することになります。看護師が配置されているかどうかで、健康管理の頻度も変わってくるでしょう。
レクリエーション
基本的に、どちらもほぼ内容は同じです。集団での体操や身体を動かすゲーム、手先を使った折り紙や工作、漢字ゲームなどが挙げられます。
グループホームは、認知症に効果的なレクリエーション(回想療法・園芸療法・アニマルセラピーなど)も取り入れられています。
自立支援
有料老人ホームは、家事サービスの提供や入居者の状況に応じて機能訓練指導員によるリハビリが実施されます。認知症ケアの経験があるスタッフが対応するのも特徴です。
グループホームは、入居者とスタッフがいっしょに家事を行います。自立支援=リアビリも兼ねているため、認知症ケアについてきちんと理解しているスタッフでなければ対応できません。
このほかにも、リハビリや認知症ケア、個別対応などもそれぞれ違いがあります。
まとめ
有料老人ホームとグループホームの違いについて解説しました。同じ老人ホームでも、施設の種類によってサービス内容や特徴が大きく異なります。そのため、費用だけで選んでしまうと失敗しやすいでしょう。もちろん、どんなに魅力的な施設でも、家族の要望を無視して勝手に決定するのは避けなければいけません。今回の記事を参考に、ぜひ条件に合ったところを選んでください。