体や認知機能が衰えてしまい、老人ホームに入居する必要があっても、本人が入居を嫌がり、スムーズに入居が進まないことは多いです。知らない施設に移り住むので、拒否するのは無理もありません。しかし、在宅介護には限界があるのもまた事実です。本記事では、老人ホームに入りたがらない高齢者の心理や、適切な対応について解説します。
老人ホーム入居を拒否する高齢者の心理
老人ホームへの入居を本人が拒んでいる場合、まずその理由を把握することから始めることが重要です。拒否の理由は様々で、個人の状況や感じ方によって異なります。以下に主な理由を挙げます。
住み慣れた家から離れたくない
まず、住み慣れた家を離れたくないという感情があります。長年住み続けてきた家には思い出や安心感があり、そこから離れることに対する抵抗感は強いものです。また、老人ホームに対して否定的なイメージを持っている人も少なくありません。
このイメージが根強く、入居をためらう原因となっている場合もあります。
環境が変わる
次に、環境が変わることへの不安も大きな要因です。見ず知らずの人たちと新たな関係性を築けるかどうか、うまくやっていけるかという心配があります。さらに、介護は身内の問題であり、家族や嫁がやるべきだと考える人もいます。
このような考え方が、老人ホームへの入居を拒む理由になっていることもあります。
見捨てられるのではないかという不安感
また、家族に見捨てられるのではないかと感じる人もいます。このような感情があると、入居への抵抗感は一層強まるでしょう。さらに、施設に入ることで、今まで自分でできたことが何もできなくなってしまうのではないかという不安もあります。自立心が強い人にとって、このような不安は特に大きな問題でしょう。
快く入居してもらうための対応方法
老人ホームへの入居をスムーズに進めるためには、本人が気持ちよく入居できるように工夫することが大切です。円満な入居のための対応方法を見ていきましょう。
ホームの見学をする
実際にホームを訪れてみることが一番の理解につながります。老人ホームごとに雰囲気は大きく異なります。複数の老人ホームを見学し、本人が興味を持ちそうなポイントを見つけると良いでしょう。
否定的なイメージを払拭する
老人ホームに対する否定的なイメージを払拭することも重要です。現在の人気のある老人ホームは、昔とは大きく異なります。元気な入居者が多く、イベントやレクリエーションが充実しているホームも増えていることを伝えましょう。
新しい環境に慣れてもらう
住み慣れた家を離れたくないと感じる人には、新しい環境に段階的に慣れてもらうことが大切です。まずは老人ホームの試食会やレクリエーションに体験参加してもらい、慣れてきたらショートステイなどを利用して、老人ホームでの生活を実際に体験してもらうと良いでしょう。
趣味活動を継続できる施設を選ぶ
また、趣味などの好きなことを諦めなければならないと考える高齢者もいます。趣味活動や大切にしていることを確認し、入居後も継続できる施設を選ぶと良いでしょう。老人ホームでは、食事や入浴などの時間が決まっている以外は基本的に自由に過ごすことができます。
外部に協力を求める
家族の説得が難しい場合は、老人ホームの担当者やかかりつけの主治医に協力を求めることも有効です。老人ホームの担当者は、多くの入居を拒否する高齢者を見てきており、具体的なアドバイスをもらうことができます。また、医者の言うことを素直に聞く高齢者も多いです。
認知症の症状がある場合はより根気が必要
認知症の症状がある場合、老人ホーム入居の説明をしても同意を得るのは簡単ではありません。ショートステイなどのサービスを利用しながら、徐々に環境に慣れてもらいましょう。認知症の症状が進行している場合、本人が一度に大きな変化を受け入れることは難しいため、時間をかけて適応を支援することが重要です。
在宅介護には限界がある
在宅介護の限界について考える際は、本人の介護度や認知症の進行度合い、そして在宅で介護をする家族の生活形態や経済状況を考慮しましょう。これらの要素が、在宅介護の継続可能性を左右します。
限界まで在宅介護を続けるのではなく、早い段階から将来的な施設入居を視野に入れ、元気なうちに話し合っておくことが重要です。
事前に介護サービスをいくつか利用するのがおすすめ
在宅介護が今は可能でも、介護者が体調を崩したり、倒れてしまったりすることで、介護を続けることが難しくなるケースもあります。こうした状況に備えて、訪問介護やデイサービスなどの外部の介護サービスを併用することも大切です。
これにより、介護者の負担を軽減し、持続可能な介護環境を作ることができます。
無理に入居を進めるのはNG
また、本人が納得しないまま老人ホームへの入居を無理に進めることは避けるべきです。無理に進めてしまうと、本人が「家族から騙され、捨てられた」と感じ、家族に対して不信感や怒りを抱くことがあります。これが原因で家族関係が悪化する可能性もあるため、慎重な対応が求められます。
まとめ
老人ホーム入居を本人が拒否する場合、まずその心理を理解し、適切な対応を取ることが大切です。住み慣れた家を離れたくない、環境の変化への不安、見捨てられる恐怖などが主な理由です。解決策として、ホームの見学や否定的イメージの払拭、試食会や体験入居、趣味の継続が挙げられます。また、家族だけでなく、主治医や専門家の協力も効果的です。在宅介護の限界を見極め、早期の話し合いと外部支援の活用が、スムーズな移行を助けます。